鈴木雅明氏とBCJグループとの室内楽、合奏
鈴木雅明氏によって創設されたオーケストラ「バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)」のフルート奏者として出演するようになったのは、私がまだオランダにいた1998年ごろからです。その後ずっと菅きよみさんと交互に1stフルートのパートを務めています。その頃からBCJではJ.S.バッハのカンタータを全曲演奏し、CD化するプロジェクトが始まっています。「マタイ受難曲」とか「ヨハネ受難曲」とか「管弦楽組曲第2番」とかいったJ.S.バッハの有名曲はしばしばBCJの演奏会で採り上げられ、またカンタータもフルートパートがある場合にはその演奏会やレコーディングに私もしばしば参加しました。
BCJがはじめて海外公演を行ったのはバッハの没後記念250年にあたる2000年ことで、その後非常にしばしば海外公演を行い、そのたびに私もなんども世界各地を旅行しました。また併せて、鈴木雅明氏を中心にしたバッハの室内楽演奏会に出演を依頼させることも多く、そのように考えるとBCJ関係の演奏会は、私のこれまでの演奏活動の中で最も大きい比重を占めてきた言うことができます。
ここではそれらの演奏やレコーディング活動の中で、フルートが大きな役割をしめる演奏会を採り上げてみます。
BCJの「ヨハネ受難曲」公演。右は指揮者の鈴木雅明氏、左はいつも一緒に吹く三宮正満さん(オーボエ)と菅きよみさん(フルート)
BCJが演奏するバッハのオーケストラ曲のなかで、私が参加したCDは全部「ディスコグラフィー」の項にまとめてありますが、20枚近くに登ります。これらの曲は当然演奏会でも何度か吹きました。
バッハのオーケストラ曲の中でフルート・コンチェルトとも言える曲に「管弦楽組曲第2番」と「ブランデンブルグ協奏曲第5番」があります。前者についてはCDとしては
「バッハ・コレギウム・ジャパン J.S.バッハ 管弦楽組曲全集 Grammofon AB BIS SACD BIS-SACD-1431 」
という2枚組のCDがあります。このCDについては、世界のレコード販売網であるHMVの新譜紹介に次のような文章が出ていました。
BCJ待望の録音!バッハ:管弦楽組曲全曲
長く録音が待たれていたBCJの管弦楽組曲がついに登場します。これが期待を裏切らない素晴らしい出来で、BCJ器楽メンバーたちの名人芸が光ります。フルート・ソロが重要な働きをする第2番では前田りり子が大活躍します。SACDサラウンドによるハイブリッド盤、最新録音の2枚組ながら1枚価格、すべての人にオススメしたいアルバムです。
一方ライブでは、2006年のアメリカ・ツアーにおいて、ニューヨークのカーネギーホールで吹いた私の組曲第2番の演奏は、ニューヨークタイムズ紙で全賛されました。
国内では
バッハ:管弦楽組曲(全曲) ~バッハ・コレギウム・ジャパン第61回定期演奏会
2003年10月24日 東京オペラシティコンサートホール/10月25日 大阪いずみホール
などで吹いています。
ブランデンブルグ協奏曲については
鈴木雅明指揮:バッハ・コレギウム・ジャパン J.S.バッハ「ブランデンブルグ協奏曲」全曲演奏会
2002年10月18日 横浜神奈川県立音楽堂/10月19日 山形テルサホール
10月20日 千葉佐倉市民音楽ホール/10月21日 埼玉所沢市民文化センター/10月23日 東京調布市グリーンホール
バッハのカンタータの中でフルートが活躍する曲は非常に限られています。その中で1924年にライプチッヒで作曲されたカンタータにはコンチェルトのようね非常に技巧的なフルート・パートがしばしば登場します。この時期誰か非常に腕のいいフルーテイストがライプチッヒにいたのだろうと想像されています。
BCJカンタータシリーズCD第25巻には、フルートがコンチェルトのように活躍する78番、99番、114番のカンタータが含まれていますが、イギリスのBBCミュージック・マガジン2004年11月号の中で、このフルート演奏が絶賛されました。レコード芸術にもこの記事が海外雑誌の紹介として抜粋されましたので、ご参照下さい。
「バッハはこの当時フルートの達人を擁していたに違いない。というのも、これらのカンタータのいずれにも、その楽器のための名人技を必要とする傑出した音楽が含まれるからだ。フルート奏者の前田りり子の透明、明瞭、時に目眩く貢献ぶりは決定的なもので、これまでのいくつかのディスクに見いだされるものよりも明らかに豊かな表現力をそなえた彼女の献身は深く満足すべきものだ。ブラヴォー!」(「レコード芸術」より引用)
このほかBCJでは、鈴木雅明氏を中心としたピックアップ・メンバーによる小編成の室内楽コンサートがしばしば行われました。私の「コンサート歴」の中から以下にそれを抜き出しておきます。
■J.S.バッハ「音楽の捧げ物」
2001年1月7日 彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール
共演:若松夏美、高田あずみ(ヴァイオリン)鈴木秀美(チェロ)鈴木雅明(チェンバロ)他
■J.S.バッハ/室内楽の世界 2002年古楽からのメッセージ(浜離宮朝日ホール10周年記念 古楽コンサートシリーズ)
2002年11月7日 浜離宮朝日ホール
共演:桐山建志(ヴァイオリン)福沢宏(ヴィオラ・ダ・ガンバ)鈴木雅明(チェンバロ)
■バッハの思い出 ~二人の妻、天国でバッハを語る~ THE ORGAN + αSERIES VOL.4
2002年11月10日 東京芸術大学奏楽堂
共演 廣野嗣男(オルガン)鈴木雅明(チェンバロ)野々下由香里(ソプラノ)懸田高嗣(チェロ)芸大声楽アンサンブル
■バッハ家の音楽会1
2003年9月23日 名古屋市しらかわホール
共演:鈴木雅明(チェンバロ)鈴木秀美(チェロ)野々下由香里(ソプラノ)若松夏美(ヴァイオリン)
■バッハ家の音楽会2
2003年9月29日 米子市文化ホール
10月2日 大分県総合文化センター
10月4日 神戸松蔭女子学院大学チャペル
共演:鈴木雅明(チェンバロ)野々下由香里(ソプラノ)若松夏美(ヴァイオリン)福沢宏(ガンバ)
■バッハ・コレギウム・ジャパン 室内楽シリーズ No.4
2005 都民芸術フェスティバル
2005年2月2日 東京文化会館小ホール
J.S.バッハ 音楽の捧げもの他 共演:鈴木雅明(オルガン)他
■バッハ家の音楽会 ~バッハの書棚から~
2005年4月9日 名古屋しらかわホール
2005年4月10日 東京 HAKUJU HALL
共演:鈴木雅明(お話、チェンバロ)若松夏美(ヴァイオリン)鈴木秀美(チェロ)市瀬陽子(バロック・ダンス)
■アンサンブル・ヴィンセント演奏会 ゼロビート・シリーズ
2005年11月26日 神戸松蔭女学院チャペル
共演:三宮正満(オーボエ)、前田りり子(トラヴェルソ)、荒木優子(ヴァイオリン)
懸田貴嗣(チェロ)、鈴木優人(チェンバロ)、鈴木雅明(お話)
■鈴木雅明/レクチャーコンサート
2006年2月11日 名古屋 しらかわホール
共演:鈴木雅明(お話・チェンバロ)星川美保子(ソプラノ)
■古楽の愉しみ「バッハ家の音楽会」
2007年1月27日 兵庫県立芸術文化センター
共演:山口幸恵(ヴァイオリン)山本 徹(チェロ)市瀬陽子(ダンス)鈴木雅明(チェンバロとお話)
■バッハ家の音楽会
2008年1月26日 玉村町文化センター(群馬県)
共演:鈴木雅明(チェンバロとお話)、戸田薫(ヴァイオリン)、山本徹(チェロ)
■バッハ家の音楽会 ~ バロックダンスとともに ~
2008年10月18日 逗子文化プラザ「なぎざホール」
共演:鈴木雅明(チェンバロとお話)、山口幸恵(ヴァイオリン)平尾雅子(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、市瀬陽子(バロックダンス)