バッハ・コレギウム・ジャパンのアメリカツァー2006
2006年3月18日 バークレイ ファースト・コングリゲーショナル教会
3月19日 ロサンゼルス UCLA ルイスホール
3月21日 ベツレヘム セントラル・モラヴィアン教会
3月24日 ワシントン クーリッジ・オーデトリアム
3月25日 ボストン サンダース・シアター(ハーバード大学内)
3月27日 ニューヨーク カーネギー/ザンケルホール
曲目:
J.S.バッハ:管弦楽組曲第2番 ロ短調 BWV1067
チェンバロ協奏曲 ニ短調 BWV1052
2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043
ブランデンブルク協奏曲第5番 ニ長調 BWV1050
出演者:
寺神戸亮・若松夏美・高田あずみ・竹嶋祐子(ヴァイオリン)森田芳子(ヴィオラ)
鈴木秀美(チェロ)西澤誠治(ベース)前田りり子(フルート)鈴木雅明(チェンバロ)

月曜日ザンケルホールにて、チェンバリスト鈴木雅明が率いるバッハ・コレギウム・ジャパンとともに演奏するフルーティスト前田りり子。

ニューヨーク・タイムズの掲載記事(和訳)
【クラシックレヴュー】
バッハによって木製バロック・フルートの是非を問う
バッハ・コレギウム・ジャパン カーネギー/ザンケルホール
2003年にカーネギーホールで、鈴木雅明が率いるバッハ・コレギウム・ジャパンが「マタイ受難曲」をニューヨークで公演したとき、それはバッハの荘厳なる衝撃であった。しかし彼が月曜日の夕刻にもっと親しみやすいザンケルホールに戻ってきたとき、それは表面的にはあらゆる面で正反対のプログラムであった。ひとつの広大で神聖な合唱曲の代わりに、今回鈴木氏は少人数のコンチェルトと組曲を携えてきた。
とはいうものの、バッハにおける神聖なものと世俗的なものとの境目は非常に薄く、協奏曲の楽章は、一皮むいてみれば、初期のカンタータの名残であることが分かる。そして受難曲であれ、ブランデンブルグであれ、鈴木氏の演奏形態は、音楽学者がバッハに対して有効な力となることを知っていること、つまりひとつのパートを一人の演奏者で受け持つコンパクトさに基づいている。
その結果、音楽家は常にスポットライトにさらされ、群れの中に隠れることができない。コレギウムの演奏者はそのことが心地よさ気に見えた。このグループのフルーティストである前田りり子は、快活な管弦楽組曲第2番と、コントロールが難しいブランデンブルグ協奏曲第5番のソロラインを、柔軟でまろやかな音で表現し、木製バロックフルートの是非についての議論に肯定的な説得力を与えた。
ヴァイオリニストの寺神戸亮は、この両曲において完全に前田氏のインパルスと適合し、またブランデンブルグとニ短調の協奏曲(BWV1043)では若松夏美とタンデムで、彼自身が優美なソリストであることを証明していた。
そして鈴木氏のチェンバロ演奏は、サポーターとしての役割とブランデンブルグやニ短調のチェンバロ協奏曲(BWV1052)におけるソリストの双方において、指揮者がタクトを振るのと同じくらい正確に、アンサンブルを統率する強い意志と推進力のあるリズムを持っていた。
しかし、彼の最も賞賛すべき点は、この着古された曲たちを、新鮮な響きへとエネルギーを持て導いたことである。(Allan Kozinn)