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ベルギーの田舎の教会でやったCDレコーディング(2002年6月)

 5月にベルギーのアルデンヌ地方にある田舎村に行って、はじめてのソロCDのレコーディングをしてきました。チェンバロはベルギーのロベール・コーネン先生、ヴィオラ・ダ・ガンバは「ラ・フェート」をいっしょにやっているイギリス在住の市瀬礼子さんでした。曲目はバッハとその周辺のドイツ・バロック音楽です。

 レコーディングをした教会はコーネン先生の別荘の近くにあり、私たちは古い農家を改築した彼のすてきな別荘に泊めていただいて、録音をしました。村にはパン屋兼なんでも屋の店が1軒あるだけで、庭や牧場には花が咲き乱れていました。直径5センチもあるタンポポの綿毛が至るところにあり、風が吹くとまるで吹雪のように綿毛が風に舞い、幻想的な風景でした。本当にのどかで静かな村なのですが、教会の回りには小鳥がいっぱい住んでいて、日が暮れる夜の10時頃までにぎやかに騒ぐので、録音は彼らが寝静まってからが本番と言うのがちょっと大変でしたが・・・・

  最初のリハーサルでは、優雅なコーネン先生と忙しい日本から来たばかりの私のテンポ感がまるで違っていて、どうなることかと思いました。でもコーネン先生と共に、ゆったりとした食事や散歩、おしゃべりを楽しんでいるうちに、私のテンポもだんだんゆったりしてきて、最後にはぴったり息が合うようになりました。気をつけていたつもりではあったのですが、日本の小さな部屋で一人で必死にさらっていると、ついつい猪突猛進型の演奏になってしまいます。怖いですね~。

 

 コーネン先生御推薦の教会は、長い残響を持っているのに、お風呂場のようなワンワンとした感じがなく、細かいところまで音がクリヤーに響くすばらしい教会でした。日本の響きのない部屋で音を遠くまで飛ばそうとすると、どうしても尺八のような部屋を切り裂く力強い音になりがちです。そうなるまいと、オランダからの帰国以来、いつもヨーロッパの教会をイメージしながら吹くように気をつけていたのですが、今回久しぶりに本物のヨーロッパの教会で吹いてみて、あまりに不必要に頑張って吹いている自分に気が付き愕然としてしまいました。部屋の響きに慣れてオランダ時代の勘を取り戻すのに数日かかりましたが、響きのよい部屋で、部屋の響きに身を任せるのはなんとも気持ちのいいものです。日頃のストレスを心身共に解放できたような気がします。

 ベルギーに行く前は「初のソロCDだ!」と期待半分、かなり緊張していました。でもコーネン先生ご夫妻の暖かいおもてなし、絞りたて牛乳や焼きたてのパン、白アスパラガスなどのシンプルだけれどすばらしい食事、中世から時間が止まっているかのようなのどかなベルギーの村、すばらしい教会、そして録音技師、市瀬さん、教会の神父様他たくさんの方々のご協力のおかげで、思いがけず心から楽しむことのできるセッションとなりました。ガンバの市瀬さんも「たくさんの録音をこれまでしたけど、こんなにのんびりと楽しみながらできたのは初めて」と言っていました。私自身、細かい技術的な部分では後悔はいくらでもありますが、全体として、とても雰囲気のある録音ができたと思っています。発売時期はまだ未定ですが、来年は一度コーネン先生に日本においでいただき、CD発売記念ツァーでもしたいと考えています。詳細が決まりましたら、ご案内しますので、お楽しみに!

belgium1.jpg

教会の中での録音風景

録音した教会とコーネン先生の別荘の写真

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