コラム(2014年2月)
■ 私は「横笛吹き」(2014年2月20日)
最近自分のプロフィールなどで肩書を書かなければならない時、ちょっと困ることがあります。フラウト・トラヴェルソ奏者というのが一般的なのかもしれませんが、ではそもそもフラウト・トラベルソとは何かといえばイタリア語で「フラウト=笛、トラベルソ=横の」という意味なので、つまりは横笛ということです。フラウト・トラベルソという言葉自体に古い笛とか木製のフルートという意味は全くなく、今でもイタリアのモダン・フルート吹きはみんなフラウト・トラヴェルソ奏者です。
そんなわけで、長い間「ベーム式じゃないよ」という意味を込めて、「バロック・フルート奏者」を肩書にしていたのですが、バロックだけでなく、中世、ルネサンス、クラシック、ロマン派など様々な時代の楽器を吹くようになってくると、コンサートのたびに「ルネサンス・フルート奏者」など肩書を変える必要が出てきます。さらにいくつもの楽器を一つのコンサートで使う時にはもうどうしようもなくなって、結局「フラウト・トラヴェルソ奏者」にしてしまうのですが、だったらもう単に「フルート奏者」でもいい気がしてくるけど、それではベーム式フルートのコンサートと勘違いされてしまいそうだし、だったら「古楽フルート奏者」とか「時代別フルート奏者」とか「木管フルート奏者」の方がいいかなぁなど悩みはつきません。自分で一番しっくりくるのは「横笛吹き」。邦楽奏者と間違えられそうだし、「フラウト・トラヴェルソ」の単なる邦訳だけれど、とにかく何であれ自分が吹きたい笛を吹き続けられたらいいなという願いを込めて。
■ J.S.バッハ:ミサ曲イ長調の中のフルートパート(2014年2月23日)
2月22日には神戸の松陰女子大学チャペルで、23日は東京オペラシティのタケミツホールで、バッハ・コレギウム・ジャパンのコンサートがありました。私が演奏したミサ曲イ長調BWV234は全部で6曲から成り立っていますが、そのうちの4曲はフルートがソリストのように大活躍しました。特に4曲目のソプラノと2本のフルートのためのアリア “Qui tollis peccata mundi”は、バッハのフルート付きアリアの中でも5本の指に入ると思うほどとても美しい曲でした。チェロやオルガンの通奏低音がなく、ヴァイオリンとヴィオラが通奏低音を担当するという珍しい編成で、各小節にたくさんの不協和な音が使われ、静かに神の罪の許しを請う雰囲気が涙をそそりました。松陰女子大学ではCDの録音もしましたので、きっと1年以内には発売されると思います。乞うご期待!
松陰女子大学チャペルでのリハーサルとチャペルのオルガン